2022-11-11

キーボードのキー配列と打ちやすさについて思いを巡らせてみました [自キ沼 #14]

コンピュータの標準キーボードは、タイプライターの時代の名残から、各行のキーがズレて配置されています。

(前置きが長くなりすぎてしまったので、お急ぎの方は中盤の一覧のところまで読み飛ばしてくださって結構です。)

標準的なずれ量は、数字行から右下方向へ、0.5u 0.25u 0.5u となっています。
この角度を計算してみるとおおよそ13度になります。
市販のマイクロソフトやLogicoolやLenovo Goなどのエルゴノミックキーボードは、この角度でハの字型の傾斜がつけられています。
(2行目と3行目の間の勾配が0.25なので、atan(0.25) でこの行の間の傾斜は14度です。
しかしながら、市販エルゴノミックキーボードではそこまで傾斜していなくてすべからく13度のようでした。
なので、ここでは市販品の実測値を優先しています。
図中のカラムスタッガードのAtreusも10度と、ほぼこの角度でした。)

自然に腕を机の上にのばしたときの手の角度も、おおよそこの角度であると仮定します。

標準キーボードでのブラインドタイピング(タッチタイプ)では、なぜか左手右手とも各指が右下に傾斜したキーを担当する、というのはどう考えても手の造りに合っていません。
自作キーボードは、この違和感から(さらにこのために腱鞘炎や肩こりを誘発しているとの思いから)、生まれてきたのではないでしょうか。

このキーの傾斜と手の角度の関係(いかに角度がズレているか)を、いろいろなキー配列で図に表してみました。
オレンジ色の実線が左右の手の向き、水色の実線がキー配置の行の間の傾き、円弧の矢印が手とキーの向きの違いを表しています。
左右分割キーボードは自由な角度に置いて使用できますが、いったん単純化して考えています。

以下、それぞれの配列でズレ角を見ていきます。

  • 標準キーボードでは、指とキーのズレ角は、右手26度・左手0度です。
    あまり打ちやすくないかもしれませんが、これが業界標準で、体もある程度これに慣れています。図を見ると、左手側は手の向きに対して角度が逆方向についていて、右手と左手のバランスが悪いと言えます。

  • カラムスタッガードでは、これがカラムスタッガードの定義であり目的なのですが、指とキーのズレ角は左手右手とも0度です。標準キーボードに対する左右のズレ角調整の合計は26度で、今回比較した中で最大です。
    一見、理屈ではベストのように思えます。しかしながら、わたしが実際使用してみた実感としては、左手側が標準キーボードとの違いが大きすぎて、なかなかミスタイプを減らせませんでした(このブログでも何度も言っていますが、Cのキーを人差し指で押したいのにスタッガード量0だと押せない)。標準キーボードでの慣れにどうしても引っ張られてしまう印象です。もちろんカラムスタッガードでも全然問題ない人、標準キーボードの呪縛から逃れられた人にはベストだと思います。

  • 自作キーボードで次に多く使われているオーソリニアでは、右手13度・左手-13度と、左右対称です。
    数値上は、これもなかなか良さそうです。しかしながら、左手はズレ角を緩和していますが、右手が左手とは逆方向の角度になる点には注意が必要です。左右のズレ角調整の合計は差し引き0です。

  • つぎのAlice配列は(親指ブロックはLilithの図の流用で一般的ではない見た目ですがご容赦ください)、標準キーボードを左右分割して、手の向きに合った角度にいわば矯正して再度くっつけたものです(小指ブロックはさらに工夫がありますが、今回は小指に関しては触れません)。指とキーのズレ角は、左手13度・右手13度です。
    左右で均等、標準キーボードに対して手首を無理やり曲げて合わせた状態と同じになります。ズレ角調整の合計は差し引き0です。
    じつは世の中のAlice配列キーボードは、この図の半分くらいの矯正具合のものが多いです。実地的には指とキーの角度のズレ角は左手19.5度・右手6.5度(この場合も合計0)といった感じでしょうか。傾斜が弱いと左手側の矯正度合いが物足りない感じがします。

  • わたしのセルフメイドのLilithキーボードはAlice配列を左右分割したものです。さらに、右手側の各行の傾斜を半分(0.25u 0u 0.25u)に減らしています(右手側を矢印キーやテンキーとして使う時に行の傾斜が無いほうが良いと考えました)。指とキーのズレ角は左手13度・右手6.5度です。
    左手は半分矯正、右手は標準配列の傾斜の半分の量となり、標準配列に寄り添いつつも両手ともにズレ角を緩和していると言えます。ズレ角調整の合計は6.5度です。自画自賛・我田引水的になってしまっていますが、自分としては、これがなかなか良いのではと考えています。
    (最初からこういうことを考えていたわけではなくて、キー配列はもっぱら感覚的(Cのキーを人差し指で押す癖のせいでカラムスタッガードでは入力しずらい、ロースタッガードの単純な左右分割傾斜では小指の疲れが取れない)に作っていました。今回のズレ量比較は、数日前にふと思い付いた発想です。算数的に1つの数値比較だけで済めば単純でよいのですが、そんなに単純でもないようです。)

    (じつは、さらに突き詰めて右手だけオーソリニアにすればズレ角調整合計を13度にまで減らせる、と今回の中でちょっと考えました。でもそうしてしまうと、右手側の小指ブロックの配置がきれいにできないし、見た目も標準から離れすぎかなと思い、ボツになっています。)

このあたり、今回のように数値化したり、いろいろな発想を意識することで、自作キーボードでまた新たなアイデア、ベターななにか、が出てくるかもしれないなあ、と思い書いてみました。

なお図の、手の甲のイメージはUnicodeの絵文字領域のraised back of handがちょうど良い感じの形だったので、拡大して使ってみました。
キー配列のメージはKeyboard Layout Editorのプリセットを使いました(もちろんAliceとLilithは自作)。

この投稿はセルフメイドのLilithキーボードを使って書きました。

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