2022-11-24

choc v1用Cherryプロファイル的3Dプリントキーキャップの出来栄え [自キ沼#16]

先日、満を持してKailh choc v1ロープロファイルスイッチ用にキーキャップをお試しで3Dプリント発注しました。
PBT素材でしっとりしたMBKキーキャップは、質感はとても気に入っているのですが、縦方向に指を滑らせるときにどうしても大きく引っ掛かりを感じてしまっていたからです。
Cherry MXスイッチのCherryプロファイルキーキャップに似せたのでlpCherryと名付けました。
実際にLilithに装着して数日使ってみた感想です。

  • 一言で言うと、全体的に手作り感満載です
  • お試しに20個発注、半分はBlackレジン、もう半分は比較用に(じつは間違えて)6000番白レジンにしました。白レジンは最初に雑に扱っていたら、いちばん安い素材のためか足が1本折れてしまいました
  • 3Dプリントの出力は、多少の欠けはありますが、Fusion 360のCAD図面どおりの形状。前回のLDSAキーキャップでは表面の縞や荒れが気になりました(ヤスリがけはまだ試せておらず)が、今回はそれほどでもありません。単純な平面と緩やかな一方向の曲面なので製造しやすかったと思います、あるいは短期の間に技術進歩?
  • 刻印も適当に入れてみました。PowerPointでフォントをアウトライン化したSVGをFusion 360に読み込むとサイズがデタラメになってしまったので、文字サイズが目分量で狙っていたよりも大きくなってしまいました。線の幅はあとで計測したら0.8mmになりました。いちばん細い白色マジックでかろうじて塗れる幅なので、これ以上小さくすると無理っぽいです(より細い、黒の極細マジックは準備していませんでした)。写真のDの位置のキーは前回発注のLDSAキーキャップに手書きで書いたガタガタなものですが、結局どちらも微妙な感じです。刻印のデコボコの指触りが心配でしたが気になりませんでした(シールでは指先に触る感覚がずっとあった)。刻印はレーザーとかじゃないと綺麗に仕上がらないのかもしれません。着色とかもできるといいので、下地処理も必要なのかも
  • MXのCherryプロファイルに比べて、高さをchoc v1に合うように最小化しました。さらに行の間の段差をなくしました。キートップの面の傾斜はMXのキーボードが6度くらい最初からチルトしているのを差し引きしてAの行がほぼ0度になるようにしました
  • キートップの指を受ける面が大きいので、指を置いていて落ち着く感じが気持ちいです
  • シリンドリカル(円筒状)は、指の縦方向の移動を邪魔しないのがやはり良いです
  • ステップスカルプチャーも、数字行が近くに感じられていい感じです。持ち運ぶ場合には出っぱるので注意が必要かも
  • 面取り(フィレット)は今回0.3mmだけにしたのですが、もう少し大きくした方が良さそうです。いまは角がちょっと痛いです
  • 裾(スカート)はもっと長くしても大丈夫そうです。デザイン的にも打鍵音の面でもその方が良さそうです。肉厚も今回は1.25mmですが、もっとギリギリまで厚くした方が同じ理由で良さそうです
  • 今回のキーキャップに入れ替えてみると、不思議とMBKキーキャップでは軽すぎて使い物にならなかったchoc v1 Pink軸の20gバネでも不都合なく使えてしまいます。これは良い傾向です。指先の収まりが良いので変な力が入らないからなのかもしれません

前回の投稿Twitterでつぶやいているように、NuPhy薄型キーボードのパーツもお試し発注してしまいました。
製品のクオリティと見比べてた後だと書けなくなると思い、こちらを急ぎ投稿しました。

この投稿は、セルフメイドのLilithキーボード+lpCherryキーキャップ(左手の一部)を使って書きました。

2022-11-21

自作キーボードのデザイン性はワクワクにつながる、無性に欲しくなった存在しないNuPhy Air75改のNuPhy Alice [自キ沼 #15]

ロープロファイルのメカニカルキーボード製品として最近話題になっているNuPhy Air75。
Gateron low profileスイッチ採用、素直なキー配列、機能的なカバーも含めたシステム構成、そして何よりの特長は、カワイイ配色ですね。
無骨な単色だとどのメーカーを選んでも同じと思ってしまいがちになりますが、特徴的な配色が気になりだすともう忘れられません(エモーショナルですね)。
選べるカラバリはオプションも含めて、白基調、グレー基調、黒(文字部分がバックライト透過、黒は正面の写真が無かったので図はグレー画像から合成)の3つ。

どれもに共通の、グリーン、オレンジ、イエローの3色の印象的な差し色(アクセントカラー)が入ります。
1色だけの差し色は他社でも使われていることがありますが、ここまできれいに3色を使っているのは見たことがありません。

すでにセルフメイドの自作キーボードを知ってしまったわたしは、もう標準配列の一体型にはどうしても戻れません
それで、想像してみたのが、4つめの図です。
元の製品と同じサイズのケース(Fn行ありの75%)に、Alice配列(Fn行を削除して60%)がきれいに収まりました(左右の小指ブロックは調整しないままです)。
左右に分割もできたら完璧です。
残念ながら、スペースキーやEnterキーは図の中で長さを変形している(CapsやShiftも変形が必要)ので、NuPhyのキーキャップを手に入れて自作しようとしてもこの配色でこの配列は実現できません(このデザインが手に入るのなら、わたしのchoc v1縛りは解いてよいと思ったほどなのに)。

NuPhyさん、これを見て製品化してくれないかな。
あるいは自作するとして、不足分のキー用にレジンで3Dプリントしたキーキャップに、こんなにきれいに色を付けられるのかな。

2022-11-11

キーボードのキー配列と打ちやすさについて思いを巡らせてみました [自キ沼 #14]

コンピュータの標準キーボードは、タイプライターの時代の名残から、各行のキーがズレて配置されています。

(前置きが長くなりすぎてしまったので、お急ぎの方は中盤の一覧のところまで読み飛ばしてくださって結構です。)

標準的なずれ量は、数字行から右下方向へ、0.5u 0.25u 0.5u となっています。
この角度を計算してみるとおおよそ13度になります。
市販のマイクロソフトやLogicoolやLenovo Goなどのエルゴノミックキーボードは、この角度でハの字型の傾斜がつけられています。
(2行目と3行目の間の勾配が0.25なので、atan(0.25) でこの行の間の傾斜は14度です。
しかしながら、市販エルゴノミックキーボードではそこまで傾斜していなくてすべからく13度のようでした。
なので、ここでは市販品の実測値を優先しています。
図中のカラムスタッガードのAtreusも10度と、ほぼこの角度でした。)

自然に腕を机の上にのばしたときの手の角度も、おおよそこの角度であると仮定します。

標準キーボードでのブラインドタイピング(タッチタイプ)では、なぜか左手右手とも各指が右下に傾斜したキーを担当する、というのはどう考えても手の造りに合っていません。
自作キーボードは、この違和感から(さらにこのために腱鞘炎や肩こりを誘発しているとの思いから)、生まれてきたのではないでしょうか。

このキーの傾斜と手の角度の関係(いかに角度がズレているか)を、いろいろなキー配列で図に表してみました。
オレンジ色の実線が左右の手の向き、水色の実線がキー配置の行の間の傾き、円弧の矢印が手とキーの向きの違いを表しています。
左右分割キーボードは自由な角度に置いて使用できますが、いったん単純化して考えています。

以下、それぞれの配列でズレ角を見ていきます。

  • 標準キーボードでは、指とキーのズレ角は、右手26度・左手0度です。
    あまり打ちやすくないかもしれませんが、これが業界標準で、体もある程度これに慣れています。図を見ると、左手側は手の向きに対して角度が逆方向についていて、右手と左手のバランスが悪いと言えます。

  • カラムスタッガードでは、これがカラムスタッガードの定義であり目的なのですが、指とキーのズレ角は左手右手とも0度です。標準キーボードに対する左右のズレ角調整の合計は26度で、今回比較した中で最大です。
    一見、理屈ではベストのように思えます。しかしながら、わたしが実際使用してみた実感としては、左手側が標準キーボードとの違いが大きすぎて、なかなかミスタイプを減らせませんでした(このブログでも何度も言っていますが、Cのキーを人差し指で押したいのにスタッガード量0だと押せない)。標準キーボードでの慣れにどうしても引っ張られてしまう印象です。もちろんカラムスタッガードでも全然問題ない人、標準キーボードの呪縛から逃れられた人にはベストだと思います。

  • 自作キーボードで次に多く使われているオーソリニアでは、右手13度・左手-13度と、左右対称です。
    数値上は、これもなかなか良さそうです。しかしながら、左手はズレ角を緩和していますが、右手が左手とは逆方向の角度になる点には注意が必要です。左右のズレ角調整の合計は差し引き0です。

  • つぎのAlice配列は(親指ブロックはLilithの図の流用で一般的ではない見た目ですがご容赦ください)、標準キーボードを左右分割して、手の向きに合った角度にいわば矯正して再度くっつけたものです(小指ブロックはさらに工夫がありますが、今回は小指に関しては触れません)。指とキーのズレ角は、左手13度・右手13度です。
    左右で均等、標準キーボードに対して手首を無理やり曲げて合わせた状態と同じになります。ズレ角調整の合計は差し引き0です。
    じつは世の中のAlice配列キーボードは、この図の半分くらいの矯正具合のものが多いです。実地的には指とキーの角度のズレ角は左手19.5度・右手6.5度(この場合も合計0)といった感じでしょうか。傾斜が弱いと左手側の矯正度合いが物足りない感じがします。

  • わたしのセルフメイドのLilithキーボードはAlice配列を左右分割したものです。さらに、右手側の各行の傾斜を半分(0.25u 0u 0.25u)に減らしています(右手側を矢印キーやテンキーとして使う時に行の傾斜が無いほうが良いと考えました)。指とキーのズレ角は左手13度・右手6.5度です。
    左手は半分矯正、右手は標準配列の傾斜の半分の量となり、標準配列に寄り添いつつも両手ともにズレ角を緩和していると言えます。ズレ角調整の合計は6.5度です。自画自賛・我田引水的になってしまっていますが、自分としては、これがなかなか良いのではと考えています。
    (最初からこういうことを考えていたわけではなくて、キー配列はもっぱら感覚的(Cのキーを人差し指で押す癖のせいでカラムスタッガードでは入力しずらい、ロースタッガードの単純な左右分割傾斜では小指の疲れが取れない)に作っていました。今回のズレ量比較は、数日前にふと思い付いた発想です。算数的に1つの数値比較だけで済めば単純でよいのですが、そんなに単純でもないようです。)

    (じつは、さらに突き詰めて右手だけオーソリニアにすればズレ角調整合計を13度にまで減らせる、と今回の中でちょっと考えました。でもそうしてしまうと、右手側の小指ブロックの配置がきれいにできないし、見た目も標準から離れすぎかなと思い、ボツになっています。)

このあたり、今回のように数値化したり、いろいろな発想を意識することで、自作キーボードでまた新たなアイデア、ベターななにか、が出てくるかもしれないなあ、と思い書いてみました。

なお図の、手の甲のイメージはUnicodeの絵文字領域のraised back of handがちょうど良い感じの形だったので、拡大して使ってみました。
キー配列のメージはKeyboard Layout Editorのプリセットを使いました(もちろんAliceとLilithは自作)。

この投稿はセルフメイドのLilithキーボードを使って書きました。