2022-08-15

JLCPCBへPCB作成とキーキャップの3Dプリントを発注してみた [自キ沼#6]

(8月18日、末尾に追記しました)

SU120での試作キーボード作成は、完璧に動作させることまでが可能ですが、キースイッチを固定するトッププレート(または単にプレート)がないために、どうしてもフニャフニャしてしまい本格利用には無理があります。
プレートの素材としてアクリルは適度な柔軟性があって良いようですが、最低の厚みが2mmまでしかなくて、Kailh chocのプレート仕様の1.2mmに合いません。
PCB基板の素材であるFR-4であれば、厚みの選択肢が多く、複雑な形状の加工も作成発注できます。

PCBの作成サービスは有名どころが何社かありますが、その中で比較的低価格を売りにしているJLCPCBについて調べ始めました。
PCB素材もFR-4以外にアルミも選べて、さらに表面実装部品の工場組み立てサービスもあるようです。
ちっちゃいダイオードやアナログジョイスティックの0.5mmピッチコネクタのハンダ付けは、自分では成功する気がしていなかったのでこれはぜひ試してみたいです。
(さらにPro MicroのArduinoチップ(いまは高価)やRaspberry PI PicoのRP2040チップも選べるようです;コントローラ部分の厚みは確実に稼げますが、キースイッチの位置にはおそらく配置できないので底面積はほとんど稼げず、メリットがあるかどうかは今後の検証が必要です。)

さらに3Dプリントサービスもあり、手作業の手作りではどうにもならない、キーキャップやケースの作成も依頼できることに気づきました。
チャット問い合わせもできて対応が早いのですが、唯一かつ最大の難点が英語のみという点でしょうか。

前回の投稿でも書いたように、ちょうどKailh choc用の独自LDSAプロファイルのキーキャップの3Dデータが公開されているのを見つけました。

  • 公開されているデータはcorne用(corneの派生corne-ish ZEN用)なので、1u通常キー、1uホーミング、それとMBKにはない1u親指(手前の高さが下がっているコンベックス)と、縦長の1.5u親指キーの構成です。
  • どうしても欲しかった、横長の1.5u親指キーは、1u親指キーを切り貼りして作成しました。3D CADなので、切り貼りは切り取り線じゃなくて切り取り面を指定して元データを分割、キートップ部分を横に伸ばして元の配置で合体させました。Autodesk Fusion360の基本操作はしばらく触っているうちに分かりました(FreeCADも触ってみましたがわたしにとってはとっつきが悪く勉強が必要そうでした。なおパソコンはM1 MacBook Airを使っています。KiCADも含めてRosetta 2で問題なく動いています)。
  • 3Dプリントに限らずJLCPCBでの発注は一品ごとに最低料金と場合によっては技術料がかかるので、キー10個で一つのデータにして品数を減らすようにしました(小部品の連結の上限10個はデータルールにあり)。プラモデルのランナー(枝)のように、外から見える表面に切り取り箇所が露出しないように、太さ1.5mm長さ5mmのコの字型の円筒をキーキャップの下面に連結しました。1u通常キーx10のパーツは1品で最低料金の$1に収まったようです。
  • これでSTLファイルを作ってJLCPCBにアップロードし、黒色レジンを指定して発注したのが日曜日。データのレビューはなぜか一発で通って火曜日に製造完了しました。今は香港の近くの深センに物があって海外便の輸送を待つのみ。クーポンを使って金額は70キーで¥1,300。まだ手元になくて、どんな出来栄えになっているのか楽しみです。

次に発注したプレートの方はいろいろ欲張って盛りすぎたためか、配線がない単純な板なのに、キーキャップよりも苦労しました。

  • Keyboard Layout EditorでわたしのLilithのキー配置を入力し、DXFファイルを生成。これをKiCADのPCBエディタに読み込んで、グリッド原点を合わせながら、キースイッチ穴のフットプリントを配置しました。小指キーの斜めになっているところは、フットプリントに13°の角度だけを数値指定して拡大しながら目分量で配置しました(一度配置した場所は基準と決めて後工程ではもう動かさない)。さらにキーボードの外形をEdge.Cutsレイヤにお絵描きして、基本形は完成。
  • デザイン性も考え、左右ブロックの外形面積を同じにしたくて、右手端で出っ張っているバックスラッシュキーだけは別の場所へ移動することにしました。これで右手側は6〜0と- = Backspaceの8列。左手側は、Escとバッククォートと1〜5、さらに中央にDelなどの追加キー列1列も設けて、左右ともに8x4に共通化できました。
  • わたしのLilithはキー配置が左右非対称なのでプレートはリバーシブルにできません。せめて、キースイッチをはめるプレートとボトムプレートをなんとか共有して、PCB費用を節約できればと考えました。そのためにコントローラやTRRSジャック部分を選択切り取り式にしました。
  • 初心者のわたしが苦労したのがこの切り取り線です。1回目は2mm幅のスロットを40mm程の長さでくり抜いて(始点終点は四角ではなくて半円)、1mmの間隔を開けて配置したのですが、残す部分が小さ過ぎて製造過程で折れてしまうとの指摘でリジェクト。2回目は同じスロットで、間隔を2mmに、間に2mmの丸穴を配置して一点鎖線にして多少補強してみましたが同じくリジェクト。2mmの丸穴部分は最初はEdge.Cutsに単純に円形を描いていたのですがこの切り取り工程に無理があると思い、直径2mmドリル穴に変更し製造しやすくしてやることで、ようやくレビューが通りました。
  • ドリル穴の作成は、例えばキースイッチの足部分のフットプリントではパッドの属性でNPTH(non-plated through hole; 電気的に導通させないスルーホール穴)を指定したものが使用されていますが、PCBエディタの中ではなぜかパッドを作れません。代わりにピア(via; 多層基板のレイヤ間を接続するメッキ穴)で穴の径を指定してドリル穴を作成しました。
  • さらに、右手用と左手用の斜め部分をうまく組み合わせて(片方を反転)、全体の材料面積を少しでも節約してみました。
  • このプレートの方は、5回のレビューに4日かかり、今日月曜日の時点でやっと製造ラインへの投入待ちです。クーポンを使って金額は最少5枚で¥4,800になりました。100mm x 100mmを超えると材料代金が掛かるのと、追加技術料¥1,000(日曜だったのでチャット窓口が開いておらず後日問い合わせます)、送料も最安¥600のOCS NEPが選べない上に重量料金になります。材料のボードサイズは360mm x 120mmでした。

キーキャップ、プレートとも、実際どんな物が来るのか、到着が待ち遠しすぎます。

この投稿はLilithプロトを使って書きました。


[2022-08-17] PCB製造の追加料金の¥1,000は、切り抜き・くり抜き(Routing)が多いためと回答がありました。
確かにキースイッチの部分含めて90箇所くらい穴を開けている(ドリル穴は除く)ので、多いんでしょうね。
右手と左手を一緒にして節約と考えたのですが、かえって高くなってしまった可能性があります。
キー数が多い(ゆずれない要件ではありますが)のも、こういう面でコストに影響ありますね。

プレートでしっかりスイッチを保持できるようなら、基板回路は100mm x 100mm以下にバラバラにしてしてしまってもいいのかも、と真剣に考え始めています。
SU120を超カスタム化する感覚です。

PCBの進捗経過は、月曜日にレビュー通過&正式発注、火曜日に製造完了&出荷待ち、です。
キーキャップの3Dプリントの進捗経過は、先週月曜日にレビュー通過&正式発注、火曜日に製造完了、(少し手違いで遅延があって)金曜日出荷、翌水曜日の今日 関空到着です。

[2022-08-18] 翌木曜日午前、キーキャップ到着しました。
第一印象悪くないです。
気のせいかもしれませんが、肌触りが粉っぽいというか、指に何かが付着する印象なので、いちど極薄の洗剤で洗ってみます。

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