2023-05-01

よりコンパクトでエルゴノミクスなアジャスタブルキーボードをつらつら考えた [自キ沼#29]

かつてのApple ADB Adjustable keyboardは、わたしがエルゴノミクスキーボードの夢を抱くことになった原点のキーボードです。
現在の市販のエルゴノミクスキーボードは巨大なものばかりで、自分のデスクに置きたくなるものがありません。
無いなら自分で作るしかない、わたしが自作キーボードを始めた第一の理由はこれです。

Apple Adjustable keyboardを現代的なキーボードとしてなんとか実現したいと思い続けている中で、今回ようやく一つの解が見えたような気がしてきました。
右の図がその姿です。
以下、今回のアイデアに込めた・込めたい思いです。
いつもながら、思いつくまま綴ります。

  • 左右分割式か可動式か:
    Apple Adjustable Keyboardのように可動して好きな角度で利用できる方式も良いのですが、お気に入りのMagic Trackpadを、お気に入りの手前のポジションに置くことができません。Lilithではそれを許すために、あえてAlice配列で分割型にしました。もちろん、トラックパッドやマウスやトラックボールを素直にキーボードの右や左に置けば良いのですが、どうしても手の移動量が大きくなって、せっかくエルゴノミクスで楽な姿勢で使えるようにしているのが、半分犠牲になってしまいます。キーボード単体でポインティングまでできればとの思いで、ジョイスティックモジュールの組み込みの模索は継続しています。今回の配列では、分割ではなくApple Adjustable Keybordのように可動式にします。
  • 右手と左手で、手の向きと行の傾きが違うのを軽減したい:
    Apple Adjustable keyboardのように、単純に標準キーボードのカラムスタッガードを左右分割して手首の向きに沿うように傾けただけでは、左右とも行が依然として右下に傾斜して左右で非対称です。これでは、それほどエルゴノミクスとは言えないと考えています(以前の投稿での考察)。自作のLilithでは右手側のズレを緩やかにすることでこの差を緩和しようとしています。結果、この約半年間、自分としては気持ちよく使えていると思います。
  • 基板をリバーシブルにしたい:
    JLCPCB等への基板発注は5枚単位なので、リバーシブルにすることで余剰基板を最小限にしたいところです(1回の発注で5台分にもなるのを2.5台分に抑える)。現状のLilithでは左右を反転した時にQとZの行が左右で0.25uズレていて、左右でスイッチの上下を反対にしてようやく収まるくらい配置に苦労しています。
  • さらに進めて、Jones配列で完全リバーシブルに:
    最近、Twitterでのやり取りの中で、@jpskennさんJones配列に出会いました。Jones配列は、左右対称のシンメトリカルスタッガード(サリチルさんの分類)で、非常によく練られた配列だと重ました。これを見た時、まさに目から鱗が落ちました。これなら手の向きに対する行の傾斜が左右で同じになり(右手Jの右下のMを人差し指、左手Fの左下のCを同じく人差し指で押すスタイルの場合です(Cを中指で押すスタイルの人はカラムスタッガードじゃないと解決しない))、そのうえ分割した時の左右の基板のキーの配置が完全に一致します。なお、センター下のジョイスティックとBキー、それとポインタボタンの有無は切り取り選択式とします。
  • 極小コンパクトキーボードへのチャレンジ:
    先日来、Lilithで5x3あるいは6x3のミニサイズの配列を模索しています(先日の投稿)。単純に標準キーボードのキー数を削っただけのコンパクトキーボードでは手首に対するエルゴノミクスが実現できないことは自明の理です。Jones配列は行が水平なまま手首への負担を小さくする発想ですが、私はこれをさらに進めて、左右分割にして手首に対してより自然なな角度に調節できるようにすればもっと良いと考えました。また5x3まで縮小するのなら1列だけになる小指担当のキーはあえてAlice配列にしなくても良さそうです。
  • 長押しモディファイアは使いたくない:
    5x3配列のキーボード(QAZまで切り詰めるので「QAZ配列」とも言うんですね)では、キー数が不足する対策として、同時押しモディファイア、あるいは長押しモディファイア(Zを単体で押すとZ、ZとJを押すとShift/J、あるいはA+CでCtrl/C、Ctrl/AはL+A)がよく使われます。長押しかどうかの判断にはタイマーが使われます。これは以前試してみたのですが、キー入力のリズムをいつも厳密に揃えないといけなくて、少しでもキーを押している時間が短かったり長かったりすると途端に誤爆、自分には全く合いませんでした。CtlやShiftやレイヤなどのモディファイアキーは主に親指ブロックにフル装備して、キーボード配列としてうまくまとめるべきと考えています。

その他、Lilithから引き継いでいる特徴です。

  • できるだけ標準サイズのキーキャップが合うようにしています。
  • ロースタッガードの標準キーボードと指運びがほとんど変わらないようにしています。
  • 親指ブロックとメインブロックの間には0.25uの隙間をあけて、親指で最下行のキーに誤って触れないようにしています。
  • また、親指ブロックのBackspaceとSpaceは1.5uの縦置きにして、親指のホームポジションが明確になるようにしています。
  • 中央にジョイスティックを配置して、ホームポジションにいながらポインタ操作ができるようにしています。
  • 配列に直接は関係ないですが、ロープロファイルは継続するつもりです。

このキーボード、Jones にあやからせていただいて Lilith mini-J と名付けたいと思います。
いつ製作・完成するかはわかりませんが、思いついた構想が自分でも気に入ったので、まずはブログとして記しました。

最後に、Apple Adjustable keyboardの、オリジナルのカタログに載っていたであろう写真です。
いま見てもエモいというか、少し生物的と言ってもいいデザインだと思います。

この投稿は自作Lilithキーボードで書きました。

[2023-05-02] ケースも考えました。
中央上端にヒンジでアジャスタブルにして、補強のために下端には円弧のガイドレールがいるかなと思います。
左右の接続をどうするか、見えにくい場所にケーブルを隠すとか、コネクタにして長いケーブルに替えて左右分割も出来るようにするとか(無線だとバッテリが場所を取るのが悩み)。
直線の時にはマグネットでくっ付けても良いかも(強力すぎると小さな角度の時にもくっついてしまうかも)。
なお、わたしはロープロファイル派なので、パームレストは考えていません。

ところで、基板は高さ4.5u、幅7u(左右共通で、左手側は中央の不要部分をカットして使う)と、もっと切り詰めれば100x100mmに収まるかも、と期待してしまいそうなところですが、キーボードとして最低限成り立つのが優先事項なので、考えないことにします。
またそう考えるのならいっそ、5x3(+1、左Shiftの分)じゃなくて6x3(-1、Z行は現状から増やさない)にすれば、0.5u増えるだけで、Tabやクォーテーションマークが格段に使いやすくなるかもしれませんし(QAZ配列は目指さない、本当に使いやすくなるかはある程度の期間やってみないと分からないところ)、あるいは数字行も入れて6x4にしてしまうとか(色々考えてすぎると今回のキーボードでの設計目標・主眼がブレてしまいますね)。

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