2022-12-06

自作のオプティカルキーボードの夢を見た [自キ沼 #18]

無接点キーボードとしてあまりにも有名なHHKBは、静電容量方式です。
回路としては電気的なON/OFFスイッチではなくて、キーの軸の上下の動きに伴って静電容量がアナログ的に変化するのを読み取って判断する必要があるため、基板もファームウェアも専用になってしまいます。
メカニカルスイッチでは板バネ状の接点をカチカチやるのですが、その必要がなく、原理的に考えても動作が圧倒的にスムーズになると言われています。

静電容量キーボードと並んで、もうひとつの無接点方式として、オプティカルキーボードがあります。
オプティカルスイッチ(光学スイッチ)は、キーの軸と連動させた光を遮る小さな部品を上下させるだけの構造です。

オプティカルキーボードでは、赤外線LEDとその光を受信するフォトトランジスタが、スイッチを実装するのと同じPCB表面に実装されます。
PCBとスイッチの間の電気的な接続は不要です。
なので、スイッチのPCBへのハンダ付けやホットスワップのためのソケットも不要で、スイッチはプレートやPCBに爪で固定します。
実際のキーボード製品のイメージの例を右に載せます。

オプティカルスイッチのサイズとしては通常のCherry MXサイズと、わたしの好きなロープロファイルの両方が用意されていて、キーキャップ軸の形状はどちらも一般的な十字型なので、キーボード設計の自由度が高いです。
スイッチ部品は例えばAmazonでも買えて、それぞれ、Gateron Opticalスイッチ(10個、単価83円から)と、Keychron Lowprofile Opticalスイッチ(87個、単価67円から)で、構造が簡単なためか色々な軸が出ています。

あとはPCB設計と、部品選定と、ファームウェアがそろえば自作キーボードとして作成できそうですよね。
ちょうどいい感じの情報がgithubに公開されているのを見つけました。

回路は、マトリックスの(例えば)行に接続した赤外線LEDを順に光らせながら(電流調整のために抵抗がはさまっている)、列に接続したフォトトランジスタでキーの状態を読み取る(キーが押されていたら光が遮られている)という方式のようで、通常の電気的スイッチのキーボードにあるダイオードは不要です。
上記girishjiさんの設計PCBの標準MXサイズ版とロープロファイル版、それとJLCPCBから赤外線LEDと、フォトトランジスタの部品情報の画面キャプチャを載せておきます。
ファームウェアは、同じくgirishjiさんのソースコードがQMKのプルリクエストとして公開 https://github.com/qmk/qmk_firmware/pull/17852 されています。

赤外線LEDとフォトトランジスタは、スイッチのハウジングに開いている穴のスーペースに干渉せずに入る大きさじゃないといけないため、表面実装の細かい部品で足が出ていないタイプですが、最初からPCBA発注してしまうつもりであれば苦にならないかなと思いました。

最後にオプティカルスイッチの軸一覧を載せておきます。
上からの見た目は通常のキースイッチとさほど変わりません。
光をON/OFFする意味ではスイッチなのでしょうが、いわゆる電気的なスイッチではないので、キースイッチと呼んでいいのかどうかがちょっと悩ましいですね。
キーボード一台用の個数のまとめ売りの他に、今は在庫切れのようですがお試し詰め合わせもあるようです。

巷では、Cherry Ultra Lowprofileが販売開始されたようですが(ほぼ週刊キーボードニュースで紹介されていました)、端子が外側に出ない表面実装なので苦労しそうで、これもいっそのことオプティカルになっていればもっと使いやすいのでは、と思ったりもしました。

オプティカルキーボードは、自作キーボードの次のステップとして是非ともチャレンジしてみたいところです。

この投稿はセルフメイドのLilithキーボードで書きました。

 

[2023-01-03] MX標準サイズのオプティカルスイッチは、Keychron.jp のサイトに通常版V2 Optical 7種(単価33円〜48円)と、
さらに改良されてPandaスイッチに寄せたLava Optical Switch 5種類(2番目の表、単価41円)が出ています。

Low Profileのオプティカルスイッチ(光学スイッチ)はKeychronから3番目の表の8種類出ていて、Super Kopekが一番安そうです(87キーセット3,960円、単価45.5円、送料500円、5,000円以上日本国内無料)。

[2023-08-20] そういえば3ヶ月くらい前にKeychronのロープロファイルのオプティカル入り スイッチテスターの在庫が復活していたので手に入れて試していました。
ロープロファイルオプティカルスイッチの第一印象は、光学式なのにバネの音がともかく少し気になりました。
光学式とは言え、物理的にキーを上げ下げするためにはバネが必要なので当たり前ではあるのですが、大きく違う感触を期待していたのに、通常の機械式スイッチとの違いがなさすぎると思ってしまいました。
電気的な接点方式と、無接点方式の仕組みは違うので、チャタリングが起きにくいなどの利点はあると思うのですが、メカニカルキーボードでチャタリングが起きた経験が皆無(昔の安物のメンブレン等ではチャタリングや無反応がままあった)なので、オプティカルにするメリットがよく分からなくなってしまいました。
Keychronロープロファイルオプティカルスイッチは軸の種類が少し豊富(バナナやミント軸)なのと、プリトラベルが短めに設定されている(標準プロファイルでもシルバー軸あり)違いくらいかな、と思います。
もちろん、ソケット無しでホットスワップできる(というかハンダ付け固定する足がない)メリットもあります(その分、PCBの丸足穴とプレートを緻密に作ってスイッチをしっかり支えてあげないといけない)。

[2023-12-28] ロープロファイルのオプティカルスイッチに実際に触れるまでに持っていたイメージは、スムーズで、静かで、なにか特別な高級感がある、という期待も含んだものでした。
実際に触れてみると、Gateron low profile (GLP)メカニカルスイッチに比べて作りが華奢な感じで、ちょうどKailh choc v1スイッチに近いイメージでした。
バネも細いものだったのでGLPのバネに交換すれば良くなるのかもしれませんが、そこまで手をかけて飛びつくほどのメリットは感じられませんでした。
メカニカルのGLPが十分に良いせいもあると思います。
これはあくまでロープロファイルでの話で、標準MXプロファイルのオプティカルスイッチだとまた事情が異なるのかもしれません。

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